多面体作家・木工職人 遠藤裕氏の展示会2019
「遠藤裕と加藤清克の木のおもちゃ展」(於:名古屋支科学館  2019/11/2~10)より



私が遠藤氏を訪ねたのは、11月7日のこと。
小田原から名古屋に連日泊まり込みでお疲れの中、大変貴重なお話を聞かせていただきました。
遠藤氏が木工において初めて多面体にかかわったのは2段目左の写真の中央の立方体に紐をかけることだったそうです。
そこで紐かけで立体を「一筆書き」することに興味を持った氏が次に作ったのが2段目中央の雪の結晶20枚による作品なのだそうです。
この作品は青い紐に着目すると、星型5角形12枚と菱形20枚で球面を分割されています。
また、雪の結晶の6角形板に着目すると1段目右のサッカーボールの白い面と重なることがわかります。
でも私にとって意外だったのは、そのような幾何学的な知識を意識することなく、氏が雪の結晶板をつなぎ合わせた結果、
出来上がったのがこの美しい作品だったということです。
そこに私は遠藤氏の美しいものを追求する情熱を感じました。
その後、菱形多面体や正多面体など様々な立体の作品を作られるようになることには、名古屋市科学館の学芸員さんとの交流もあったそうです。
そこからは、すべての多面体にたいして交差のない一筆書きの紐かけができるという定理も導けるそうです。
でもやはり圧巻は、3段目に紹介したガレやエッシャーを彷彿とさせる作品群でしょう。
トンボやアジサイ、タンポポの綿毛、雪などをあしらった球面欄間のような世界。

じつは、ご本人がおっしゃるには年齢を考えるとおそらくこれが最後の展示会とのこと。
多面体木工の大先輩の素晴らしい作品の実物を堪能させていただき、実に充実した体験でした。

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